【ぼざろSS】ひとりのバイト奮闘記と倒れる系読者モデルの誕生

『ぼっち・ざ・ろっく!』の登場人物、後藤ひとり(ぼっちちゃん)が星歌さんからアルバイトノルマを課せられて・・・ひとりちゃんには難しいアルバイトに七転八倒するショートストーリーです。

リンク:『ぼっち・ざ・ろっく!』公式



ぼざろ荒波のノルマ

ライブハウス「STARRY」の控室。カウンターに腕を組んで立つ星歌さんが、
手にした書類をパタンと机に置いた。

「今月のアルバイトノルマ、これだからね」

その一言で空気が固まった。後藤ひとりの顔色は一瞬で蒼白になり、椅子ごとガタリと後ろに下がる。

「えっ!?の、ノルマ!?そ、それってもしかして……わ、私たち……働かなきゃいけないんですか!? 
に、人間社会の荒波に……!」
ひとりは肩を震わせながら机に突伏した。

「ぼっちちゃん、大げさだよ~」と虹夏が笑いながら背中をさする。
「だって……! 今まで社会経験ゼロで……バイトなんて……人としゃべる……!死ぬっ!」

慌てふためくぼっちちゃんの様子に、喜多ちゃんが軽く笑って肩をポンと叩く。
「大丈夫だよ、ひとりちゃん!私たちみんなで一緒にやるんだから。ほら、楽しく乗り越えよっ♪」
「た、楽し……!?バイトが……!?な、なにそれ、苦行にしか見えない……!」
机の下に潜り込もうとするぼっちちゃんを、虹夏が呆れ顔で引っ張り出す。#top


スマイルと石化

「そうだ!」と喜多ちゃんがパッと顔を明るくする。
「私がこの前スカウトされた読者モデルのバイト、一緒にやろうよ!
 可愛いお洋服着て写真撮るだけだから、きっとひとりちゃんにもできるよ!」
「ど、読者モデル!?そ、それって……ひ、人前で!?
 しかも、か、可愛いとか……無理無理無理無理っ!私の表情筋は石化してるんだよ!」

ぼっちちゃんは背を丸め、両手で自分の顔を隠す。
「大丈夫だって。私が隣にいるからさ、安心して!」
喜多ちゃんが無邪気に手を握ると、その温かさに押されて、
ぼっちちゃんは半泣きのままコクンと頷くしかなかった。

撮影の公園。秋の背景、まぶしい照明。スタッフが次々と指示を飛ばす。

「はい、もっと笑顔で!カメラ見てくださーい!」
「……ッ!!」

ぼっちちゃんの顔は石像のように固まっている。
頬がひくひくと痙攣するだけで、笑顔の片鱗も浮かばない。

「ひとりちゃん!スマイル、スマイル!こっち見て!」
喜多ちゃんが横で自然体でポーズを決める。
ふわりと髪が揺れ、眩しい笑顔が秋の公園を明るく照らした。

「む、無理……無理だよ……!目が……目が死んでいく……!」
ぼっちちゃんは視線をカメラから逸らし、魂が抜けかけている。#top


必殺のウィンク

スタッフが追加で追い打ちをかける。

「じゃあ、次はウィンクお願いします!」
「ひぃぃぃぃぃ!!!」

ぼっちちゃんはその場でぷしゅーっと音を立てるかのように崩れ落ち、バタンと床に倒れ込んだ。

「ちょっと!?ひとりちゃん!!」 喜多ちゃんが慌てて駆け寄る。

スタッフも「お、お水!お水持ってきて!」と右往左往。
床に倒れたまま、ぼっちちゃんは震える声でつぶやく。

「ひ、人前は……ダメ……生き地獄……」

その姿に現場は一瞬静まり返り、次の瞬間、誰もが「これはこれで新しい」とざわついた。#top


新ジャンル“倒れる系”

その次の日、カフェで集合した結束バンド。

テーブルを囲み、喜多ちゃんが前日の出来事を身振り手振りで話す。
「――っていう感じで、ひとりちゃんがウィンクした瞬間、ぷしゅーって昏倒しちゃったんですよ!」
「……面白いね」
山田リョウはストローでアイスコーヒーをぐるぐる混ぜながら、無表情でぼそりと呟く。
「写真集にしたら売れるんじゃない? “倒れる系読者モデル”って新ジャンル」

「や、やめてよぉぉ……!」
机に突伏したぼっちちゃんの声は情けなく震えていた。

虹夏ちゃんは吹き出しながらツッコむ。
「リョウ~、普通は“心配”するところでしょ!?なんでマネタイズ考えてんの!?」
「需要あると思うけどね。陰キャが頑張って倒れる姿とか」
リョウは肩をすくめて答える。
「需要ないから!」
虹夏ちゃんの勢いあるツッコミが店内に響く。

喜多ちゃんは頬を赤らめながら、そっと付け足した。
「で、でも……ちょっと可愛かったよね、ぼっちちゃん」
「か、可愛くなんかないからぁぁぁ!!」
ぼっちちゃんの悲鳴に、結束バンドの笑い声が重なっていく。#top


これが、結束バンド

アルバイトという試練は、ぼっちちゃんにとってはまさに生き地獄。
けれど、その隣には必ず仲間がいた。

喜多ちゃんの明るさ、虹夏ちゃんの温かさ、リョウの独特すぎる感性――。
それぞれが支え合い、ツッコミ合い、笑い合う。音楽と同じくらい、
こうした日常こそが**『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンドらしさ**を形作っているのだった。#top


この記事で登場したキャラクターたちのイラストは、こちらのギャラリーページでも高画質でご覧いただけます。

上部へスクロール