【ごちうさSS】フユちゃんの悩み相談|鋭すぎるチマメ隊のアドバイス【ファンアート】

あらすじ|フユちゃんの悩み相談

夏休みが終わったばかりの、まだ少し暑さの残る午後。

ラビットハウスを訪れたフユちゃんは、チノちゃん、マヤちゃん、メグちゃんの三人へ、珍しく「相談がある」と切り出します。

けれど――

「猫の相談だ」

どう見ても本人の悩みなのに、フユちゃんはいつもの猫を盾にして認めようとしません。

そんなフユちゃんへ飛んできたのは、マヤちゃんの直球、メグちゃんの優しい一言、そしてチノちゃんの逃げ道のない正論。

チマメ隊の「鋭すぎる」悩み相談は、人に頼ることが少し苦手なフユちゃんの心を、思いがけない方向からほぐしていきます。

作品については、『ご注文はうさぎですか?』公式サイトもぜひご覧ください。


1.これは猫の相談だ

夏休みが終わったばかりの午後。

九月に入ったというのに、ラビットハウスの窓の外ではまだ蝉が鳴いていた。

冷房の効いた店内では、チノ、マヤ、メグの三人がいつものテーブルを囲んでいる。

マヤ
「いやー、学校始まった途端に暑さ倍増した気がする!」

マヤがテーブルに突っ伏した。

チノ
「夏休みが終わったから、そう感じるだけでは?」

チノはグラスを片付けながら淡々と言う。

メグ
「マヤちゃん、宿題が終わったから気が抜けたんじゃないかなー?」

マヤ
「ちゃんと終わらせたぞ!」

メグ
「最終日に?」

マヤ
「……終わったことが重要なんだ!」

チノが少しだけ目を細めた、そのときだった。

入口のベルが鳴った。

チノ
「いらっしゃいませ――」

チノが振り返る。

入ってきたのはフユだった。

いつもの猫のぬいぐるみを抱えている。

チノ
「フユさん。こんにちは」

メグ
「こんにちはー、フユちゃん」

マヤ
「お、フユじゃん!」

三人の声に、フユは小さくうなずいた。

そしてまっすぐ、三人のいるテーブルまでやって来る。

フユ
「相談がある」

マヤ
「相談?」

マヤが起き上がった。

普段のフユからは、あまり聞かない言葉だった。

メグも興味深そうに首を傾げる。

メグ
「どうしたの、フユちゃん?」

フユは答えない。

代わりに、腕の中の猫をそっと持ち上げた。

フユ
「猫の相談だ」

一秒。

三人が猫を見る。

次にフユを見る。

そしてもう一度、猫を見る。

マヤ
「絶対フユの相談じゃん!」

マヤのツッコミが店内に響いた。

フユ
「違う」

マヤ
「違わないだろ!」

フユ
「猫が悩んでいる」

マヤ
「その猫、一回もしゃべったことないじゃん!」

フユは猫の顔をマヤへ向けた。

フユ
「いま傷ついた」

マヤ
「フユがしゃべってるだろ!」

チノが二人を眺めながら、小さく息をつく。

チノ
「それで、猫さんは何に悩んでいるんですか?」

チノだけが相談の続きを促した。

フユは猫を膝へ置き、椅子に座る。

しばらく考えてから言った。

フユ
「友達に、何かを頼みたいとき」

チノ
「はい」

フユ
「どうすればいい?」

マヤが眉を上げた。

マヤ
「頼めばいいじゃん」

フユ
「……」

相談開始から十秒で結論が出た。

フユはマヤを見つめる。

フユ
「そういうことを聞いているんじゃない」

マヤ
「えっ、違うのか?」

フユ
「違う」

チノが訊く。

チノ
「では、どういう状況なんでしょう?」

フユ
「頼んだら、迷惑かもしれない」

マヤ
「あー」

フユ
「断りにくいかもしれない。予定があるかもしれない。気を遣わせるかもしれない」

メグ
「ふむふむ」

メグが真剣な顔でうなずいている。

フユ
「それに、一度頼むと次も頼む人間だと思われる可能性がある」

マヤ
「重くなってきたぞ」

フユ
「貸し借りの関係が発生する可能性もある」

マヤ
「ただのお願いだよな!?」

マヤが止めた。

フユは静かに猫を撫でる。

フユ
「だから猫は悩んでいる」

マヤ
「猫、めちゃくちゃ人間関係気にするじゃん!」


2.マヤちゃんの答え|「頼めばいいじゃん」

マヤ
「じゃあさ」

マヤは腕を組んだ。

マヤ
「嫌だったら、相手が断ればいいじゃん」

フユが見る。

フユ
「断れない性格かもしれない」

マヤ
「だったら『無理ならいいよ』って言えばいい」

フユ
「それでも気を遣うかもしれない」

マヤ
「じゃあ最初に『気を遣うな』って言えば?」

フユ
「その発言自体が気を遣わせる可能性が――」

マヤ
「めんどくさっ!」

マヤが頭を抱えた。

マヤ
「フユ、お願いする前に百年くらい考えてないか!?」

フユ
「考えることは悪くない」

マヤ
「悪くないけど、その間に用事終わるぞ!」

フユ
「終わるなら解決だ」

マヤ
「そういう問題じゃない!」

メグがくすくす笑う。

チノもわずかに口元を緩めていた。

マヤはまだ納得していないらしく、フユを指差した。

マヤ
「ていうかフユさ」

フユ
「何」

マヤ
「断られるのが怖いわけじゃないだろ?」

フユの指が止まった。

フユ
「……どういう意味?」

マヤ
「だって、『断られたら嫌』って一回も言ってないじゃん」

マヤは何でもないことのように続ける。

マヤ
「ずっと『迷惑だったらどうしよう』って言ってる」

フユ
「……」

マヤ
「フユ、自分が困るのより、相手に迷惑だったって思う方が嫌なんじゃない?」

沈黙。

フユは猫を持ち上げた。

そして、猫の顔で自分の口元を隠す。

フユ
「次」

マヤ
「え?」

フユ
「次の相談員」

マヤ
「なんでだよ!」

フユ
「参考にならなかった」

マヤ
「今めちゃくちゃ効いてたじゃん!」

フユ
「効いてない」

マヤ
「猫で顔隠してるじゃん!」

フユ
「猫の意思だ」

マヤ
「便利だなその猫!」


3.メグちゃんの答え|「頼ってくれたってことでしょ?」

メグ
「じゃあ次、私?」

メグが自分を指差した。

フユはうなずいた。

フユ
「期待している」

メグ
「責任重大だねー」

メグは少し考えた。

その間、フユはじっと待っている。

マヤまで興味深そうにメグの顔を見ていた。

やがてメグが言った。

メグ
「フユちゃんって、優しいんだねー」

フユが瞬きをした。

フユ
「……相談への回答は?」

メグ
「今のだよー」

フユ
「回答になってない」

メグ
「だって、相手に迷惑かけたくないって、ずっと考えてるんでしょ?」

フユ
「そうだけど」

メグ
「だったら優しいんじゃないかなー?」

フユは目を逸らした。

フユ
「違うと思う」

メグ
「そう?」

フユ
「単に面倒事を増やしたくないだけかもしれない」

メグ
「でもそれなら、自分がお願いした方が楽なときは頼むよねー?」

フユ
「……」

また沈黙。

今度は猫が、フユの顔の半分まで上がった。

マヤがニヤッとする。

マヤ
「二人目も効いてる」

フユ
「効いてない」

マヤ
「猫が防御形態になってるぞ」

フユ
「暑いだけだ」

マヤ
「さっきまで膝にいたじゃん!」

メグは気にせず続けた。

メグ
「私だったらねー」

フユ
「何?」

メグ
「フユちゃんにお願いされたら、ちょっと嬉しいよ」

猫が少し下がった。

フユ
「なぜ?」

フユは本気で不思議そうだった。

メグ
「だって、頼ってくれたってことでしょ?」

フユ
「……頼られるのは、面倒じゃない?」

メグ
「お願いによるかなー」

フユ
「ほら」

メグ
「でも、できないことならできないって言うよ?」

メグは笑った。

メグ
「できることなら、やってあげたいなーって思う」

フユはしばらく何も言わなかった。

フユ
「……メグは」

メグ
「うん?」

フユ
「相談員に向いていない」

メグ
「えー?」

マヤが肩を震わせる。

マヤ
「フユ、さっきから一番痛いところ刺してきた相談員をクビにしてない?」

フユ
「してない」

マヤ
「してるって!」


4.チノちゃんの答え|「それは少し不公平です」

チノ
「それでは、最後は私ですね」

チノが向かいの椅子に座る。

フユは少し身構えた。

フユ
「チノはまともな答えを期待している」

チノ
「二人に失礼ですよ」

マヤ
「チノ!」

メグ
「チノちゃんひどいよー」

チノ
「そういう意味では……」

珍しくチノが困った顔になった。

フユは猫を抱き直す。

フユ
「質問していい?」

チノ
「どうぞ」

フユ
「チノは、友達に頼みごとをする?」

チノ
「しますよ」

フユ
「迷惑だと思わない?」

チノ
「内容によります」

即答だった。

フユは少し考える。

フユ
「……普通だ」

チノ
「普通です」

チノは続けた。

チノ
「では、こちらから質問します」

フユ
「何?」

チノ
「フユさんは、私から何か頼まれたら迷惑ですか?」

フユ
「別に」

チノ
「マヤさんから頼まれたら?」

フユ
「別に」

マヤ
「おっ」

マヤが嬉しそうな顔をする。

チノ
「では、メグさんから頼まれたら?」

フユ
「別に」

メグも笑った。

チノ
「それなら、自分だけ誰にも頼ってはいけないと思うのは、少し不公平では?」

フユが止まった。

フユ
「……不公平?」

チノ
「はい」

チノの口調はいつも通り落ち着いている。

チノ
「フユさんは、私たちがお願いすることは許してくれるのに、自分はお願いしてはいけないと思っているんですよね?」

フユ
「……」

チノ
「それでは、同じ友達なのに条件が違います」

マヤが目を丸くする。

マヤ
「うわ。チノ、今日すごいぞ」

チノ
「普通に考えているだけです」

チノは続ける。

チノ
「それにフユさんは、相手が迷惑だと思うかもしれない、と言っていましたけど」

フユ
「言った」

チノ
「それは相手が決めることでは?」

フユの猫が、ゆっくり持ち上がった。

チノ
「相手が嫌がるかどうかまで、フユさんが先に決めてしまうのは……」

チノは少し考える。

チノ
「やっぱり、少し不公平だと思います」

猫が完全にフユの顔を隠した。

マヤ
「おおー」

マヤが感心する。

メグ
「チノちゃん、すごく鋭いねー」

メグもぱちぱちと小さく拍手する。

チノ
「褒めないでください」

チノは少し困ったように視線を逸らした。

チノ
「私はただ質問しただけです」

猫の向こうから声がする。

フユ
「……相談を終了する」

マヤ
「三人目も効いてる!」

フユ
「効いてない」

マヤ
「じゃあ顔見せろよ!」

フユ
「猫が嫌がっている」

マヤ
「絶対フユだろ!」


5.フユちゃん、人に頼る練習を始める

しばらくして。

フユは猫を膝へ戻した。

フユ
「分かった」

マヤ
「何が?」

フユ
「練習する」

マヤ
「何を?」

フユ
「人に頼る練習」

マヤとメグが顔を見合わせる。

チノも少し驚いた。

チノ
「練習が必要なんですか?」

フユ
「必要だ」

フユは真剣だった。

フユ
「急に本番は危険だ」

マヤ
「頼みごとに本番とかあるのか?」

フユ
「ある」

マヤ
「ないと思うぞ」

フユ
「ある」

メグ
「フユちゃんが言うならあるのかなー?」

マヤ
「メグまで乗るな!」

最初の練習相手はマヤになった。

フユがテーブルの上を見る。

角砂糖の入った小さな器。

自分からは少し遠い。

フユ
「マヤ」

マヤ
「おう」

フユは一度息を吸った。

フユ
「……砂糖を取って」

マヤは器をつかみ、フユの前へ置いた。

マヤ
「はい」

フユ
「……」

マヤ
「終わりだぞ?」

フユ
「本当にいい?」

マヤ
「砂糖だぞ!?」

フユ
「迷惑では?」

マヤ
「腕を二十センチ動かしただけだよ!」

フユ
「後悔してない?」

マヤ
「するわけないだろ!」

フユはうなずいた。

フユ
「成功」

マヤ
「何の成功なんだこれ!」

次はメグ。

フユは猫を差し出した。

フユ
「メグ」

メグ
「なあに?」

フユ
「少し持っていて」

メグ
「いいよー」

メグは猫を抱きしめる。

メグ
「かわいいねー」

フユがじっと見ている。

三秒。

五秒。

フユ
「……返して」

マヤ
「早い!」

マヤが叫んだ。

フユはすぐ猫を取り戻す。

フユ
「長時間はまだ危険だ」

マヤ
「何が危険なんだよ!」

フユ
「猫が不安になる」

マヤ
「絶対フユじゃん!」

最後はチノ。

フユは棚に置かれた本を見た。

フユ
「チノ」

チノ
「はい」

フユ
「あの本を……」

言葉が止まる。

チノは待った。

フユが続きを言う。

フユ
「貸してほしい」

チノ
「どうぞ」

チノは本を取って渡した。

フユ
「……ありがとう」

チノ
「はい」

それだけだった。

誰も困らない。

誰も嫌な顔をしない。

何も起こらない。

フユは受け取った本を見つめる。

フユ
「簡単すぎる」

マヤが笑った。

マヤ
「だから最初からそう言ってんじゃん!」


6.猫を使わない、フユちゃんの最後のお願い

夕方。

窓から差し込む光が、少しずつオレンジ色に変わっていた。

マヤ
「そろそろ帰るかー」

マヤが立ち上がる。

メグ
「そうだねー」

メグもバッグを持つ。

チノは使ったカップを片付け始めた。

チノ
「フユさんも帰りますか?」

フユは猫を抱きながら、三人を見る。

「……」

何も言わない。

マヤが首を傾げる。

マヤ
「フユ?」

フユは猫を見る。

いつものように、その猫に言わせればいい。

猫が言った。

もう少しいてもいい。

猫が寂しがっている。

猫の意思だ。

いくらでも逃げ道はあった。

フユは猫を膝へ下ろした。

フユ
「もう一つ」

三人が見る。

フユ
「お願いがある」

今度は猫を持ち上げなかった。

フユ
「もう少しだけ」

フユは少し視線を下げる。

フユ
「一緒にいてほしい」

静かになった。

店の外から、夏の名残みたいな蝉の声が聞こえる。

マヤが笑った。

マヤ
「いいよ」

椅子を引いて、また座る。

マヤ
「最初からそう言えばいいじゃん」

メグも隣へ戻った。

メグ
「私もまだ大丈夫だよー」

チノは三人のカップを見る。

チノ
「では、もう一杯だけ淹れますね」

フユ
「……いいの?」

チノが振り返る。

チノ
「嫌だったら断ります」

フユが少し目を見開く。

それから、

フユ
「そうだった」

と、小さく笑った。

フユ
「相談してよかった」

マヤがすぐ反応する。

マヤ
「猫の相談じゃなかったのか?」

フユは猫を持ち上げた。

フユ
「猫がそう言っている」

マヤ
「最後まで猫使うのかよ!」


7.練習の成果|フユちゃん、上達しすぎです

さらに二十分後。

フユ
「マヤ」

マヤ
「ん?」

フユ
「そこのクッキー」

マヤ
「はいよ」

フユ
「メグ」

メグ
「なあに?」

フユ
「猫を持っていて」

メグ
「いいよー」

フユ
「チノ」

チノ
「はい?」

フユ
「ココア」

チノが止まった。

マヤも止まった。

メグだけは猫を抱いてニコニコしている。

フユは何事もなかったように座っていた。

マヤが机を叩く。

マヤ
「ちょっと待て!」

フユ
「何?」

マヤ
「頼る練習、上達しすぎだろ!」

フユ
「練習したから」

マヤ
「さっきまで砂糖頼むだけで五回確認してただろ!」

フユ
「成長した」

マヤ
「成長速度がおかしい!」

チノも少し困った顔をする。

チノ
「フユさん」

フユ
「何?」

チノ
「お願いすることと、人に全部やってもらうことは違います」

フユ
「……違う?」

フユが本気で考え込む。

マヤが頭を抱えた。

マヤ
「そこから教えるのかよ!」

メグが猫をゆらゆらさせながら笑った。

メグ
「でもフユちゃん、お願いするの上手になったねー」

フユ
「うん」

フユは満足そうにうなずく。

フユ
「三人のおかげだ」

マヤが言葉に詰まる。

チノも一瞬だけ黙った。

メグは嬉しそうに笑った。

ほんの少しだけ、空気が温かくなる。

――が。

フユはすぐにテーブルを指差した。

フユ
「マヤ」

マヤ
「今度は何だよ?」

フユ
「クッキー、もう一枚」

マヤ
「自分で取れーっ!」

ラビットハウスに、マヤの声が響いた。

九月になっても、夏はまだ少し残っている。

そしてフユの「頼る練習」は――

どうやら、しばらく続きそうだった。


相談を終え、ケーキを囲みながら笑い合うチノ、マヤ、メグ、フユ

フユちゃんの「お願い」が教えてくれたこと

フユちゃんにとっては、ちょっと勇気のいる「お願い」。

けれど、チノちゃん、マヤちゃん、メグちゃんにとっては、頼ってもらうこともまた、友達として当たり前のことなのかもしれません。

マヤちゃんの直球、メグちゃんの優しい一言、そしてチノちゃんの鋭い正論。

三人のアドバイスを受けて、ほんの少しだけ人に頼れるようになったフユちゃんでした。

もっとも――お願い上手になりすぎるのも、それはそれで問題のようですが。

BlueRabbit_Artのごちうさイラストもどうぞ

BlueRabbit_Artでは、『ご注文はうさぎですか?』のキャラクターたちを描いたファンアートも公開しています。

BlueRabbit_Art ギャラリーを見る

チノちゃんたちの「かわいい」「楽しい」「ちょっと心が温かくなる」瞬間を描いたSSやイラストを、これからも掲載していきます。


※本記事は『ご注文はうさぎですか?』を題材とした非公式の二次創作SS・ファンアート記事です。原作・公式各社とは関係ありません。

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