【ごちうさSS】メグちゃんの「秘密の願いごと」解読作戦【ファンアート】

あらすじ|メグちゃんの秘密の願いごと

秋のラビットハウスで、チノ・マヤ・メグ・フユが囲む小さなお茶会。ふわふわの服に身を包んだメグが取り出したのは、一冊の謎解きノートでした。

直接言うのは恥ずかしいから、お願いをクイズにしてきたというメグ。張り切るマヤに、記録係のチノ、静かに手がかりを拾うフユ――いつものお茶会が、大真面目な解読作戦へ変わっていきます。

何気ない思い出の先に隠れていたのは、少し照れくさくて、温かな願いごと。メグを中心に四人の可愛らしいやり取りを描く『ご注文はうさぎですか?』の二次創作SSです。

作品公式サイト:ご注文はうさぎですか?

花のシール付きノートを胸に抱えるメグと、肩を寄せて微笑むマヤ。テーブルには紅茶と焼き菓子

メグちゃんの「秘密の願いごと」解読作戦

1.お茶会と、鞄の中の秘密

マヤが本を開くと、葉っぱが一枚落ちてきた。

テーブルに触れる直前、隣のフユが指先で受け止める。赤茶色の葉は、薄い透明なシートに挟まれ、上の端に黄色いリボンが結ばれていた。

マヤ「おっ、救出成功!」

フユ「また行方不明になるところだった」

マヤ「今日はなくしてないぞ。落ちただけだぞ」

チノ「先週も、最初はそう言っていましたね」

ラビットハウスの二階。窓辺から差し込む秋の光が、四人分のカップを照らしていた。

窓から入る風が少し冷たくなって、今日は四人とも、ふわふわした上着を羽織っている。チノは水色、フユは淡いラベンダー色のカーディガン。マヤのクリーム色のパーカーが、メグのピンクの袖に触れていた。

メグは生成りのワンピースの膝を整え、袖口の柔らかな毛並みを指先でそっと撫でた。

チノが最後の皿を置くと、焼き菓子の甘い匂いに、紅茶の湯気が重なる。メグは膝の上で両手をそろえ、その光景を眺めてにこにこしていた。

先週、マヤはこのしおりを探して、鞄の中身を全部出した。上着のポケットも、本棚の裏も調べた末、読みかけの本から見つかったのだ。

メグ「ちゃんと続きのところに挟まってたんだよねー」

マヤ「あれは、ちゃんと仕事をしすぎてたんだよ」

チノ「しおりとしては正しいと思います」

フユ「持ち主が見失っただけだ」

マヤ「今日は二人とも厳しいな!」

メグが口元に手を当てて笑う。マヤはその肩に軽くもたれ、味方を求めるように顔を寄せた。

マヤ「メグはわかるよな。本に挟んだことを忘れる日だってあるよな」

メグ「うん。私も、探してたものを持ってたこと、あるよー」

マヤ「ほら!」

チノ「安心するところではないです」

マヤが笑って体を起こす。その肩が離れたあと、メグの手が少しだけ浮いた。

指先は何もつかまず、膝へ戻る。

チノがお茶を注ぐ音に紛れて、メグは鞄の口をそっと開けた。中にある薄桃色のノートを確かめて、また閉じる。

チノ「何か、忘れ物ですか?」

メグ「ううん。ちゃんと、あったよ」

それだけ答えると、今度はカップを両手で包んだ。

マヤは焼き菓子を一つつまみ、窓の外へ目を向ける。

マヤ「昨日のおはぎもおいしかったよなー。千夜のところの」

メグ「きなこの、ふわふわだったねー」

フユ「マヤの口の周りも、きなこだった」

マヤ「それはもう忘れていいから!」

チノ「今日は粉がついても、すぐにわかるようにしておきます」

チノが紙ナプキンを一枚、マヤの皿の隣へ置く。

置かれた本人が不服そうに頬を膨らませると、その向こうでティッピーが鼻を動かした。低い棚の上に敷かれたクッションから、菓子の皿を見ている。

マヤ「ティッピーも参加する?」

チノ「見るだけです」

フユ「監督かもしれない」

フユは自分の隣に置いた猫のぬいぐるみの向きを、ティッピーの方へ変えた。

フユ「こっちは副監督だ」

チノ「監督が増えても、お菓子は増えませんよ」

また笑い声が重なった。

メグは一緒に笑いながら、鞄へ手を伸ばした。けれどマヤがこちらを向いた途端、手を引っ込めてしまう。

膝の上で、右の人差し指が左の手の甲をなぞる。

マヤ「メグ、どうした? さっきから鞄とにらめっこしてるぞ」

メグ「えっ。あ……うん」

今度こそ、と小さく息を吸う。

薄桃色のノートを持ち上げると、表紙に貼った四つの花のシールが光った。

メグ「今日はね、みんなに、ちょっとだけお願いがあるんだけど……」

三人が顔を向ける。

メグはそれだけで一度ノートを引き寄せ、胸元へ抱え直した。

メグ「そのまま言うの、恥ずかしいから。クイズにしてきたの」

マヤ「クイズ?」

メグ「うん。解いたら、私のお願いがわかるようになってるんだけど……やってくれる?」

マヤの椅子が、勢いよくテーブルへ近づいた。

マヤ「もちろん! 任せろ!」

その返事があまりに早くて、メグは安心する前に、ぱちぱちと瞬きをした。

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2.秘密の願いごと解読作戦

ノートを開く前に、マヤはテーブルの上を片づけ始めた。

自分の皿を端へ寄せ、本を椅子の上へ移し、しおりは念入りに本へ挟む。

チノ「今度はどこに入れたか、覚えておいてくださいね」

マヤ「今はそっちの事件じゃなくて!」

マヤは空いた場所を、手のひらでぽんと叩いた。

マヤ「これより、メグの秘密の願いごと解読作戦を開始する!」

メグ「さ、作戦になるんだねー」

マヤ「大事なお願いなんだろ。全力でいくぞ。チノ、記録係!」

チノ「ノートに直接書けばいいのでは?」

マヤ「途中の推理も残した方がいいじゃん。あとで重要になるかもしれないし」

チノ「……それは、そうですね」

チノは少し考え、棚からメモ用紙と鉛筆を持ってきた。角をきちんとそろえて置き、一行目に作戦名を書き始める。

思ったより長かったらしく、最後の三文字だけ小さくなった。

フユ「私は?」

マヤ「フユは、何か気づいたら教えてくれ。細かいの、得意そうだし」

フユ「わかった。監督も兼ねる」

チノ「副監督ではなかったんですか?」

フユ「昇格した」

猫のぬいぐるみが、テーブルの端から顔を出す。

ラビットハウスで、モコモコの服を着たチノ・マヤ・フユがメグの謎解きノートを囲む

マヤはうなずきかけてから、首をひねった。

マヤ「私が指揮するんじゃないの?」

フユ「現場は任せる」

マヤ「いつの間にか上にいる!」

メグが吹き出す。ノートを渡すために伸ばした腕から、少しだけ力が抜けた。

表紙をめくると、丸みのある字で説明が書かれていた。

答えは、ひらがなで書くこと。

困ったら、みんなで相談してよいこと。

その下には小さな花模様が並び、右下の隅にも細い字が続いている。

マヤは早く問題を見たくて、もう次のページへ指をかけていた。

チノ「待ってください。まず説明を――」

マヤ「大丈夫、ひらがなで、みんなで相談! 覚えた!」

ぱらりとページがめくられる。

メグは止めようとして口を開き、けれど、そのまま膝の上で手を握った。

隣からフユが、ちらりと様子をうかがう。

フユ「言いにくいお願いなのか」

メグ「うん……ちょっとだけ」

マヤ「まさか、一人じゃ行けない場所があるとか?」

チノ「誰かに何かを伝える、お手伝いかもしれません」

鉛筆が紙の上を走る。

メグはのぞき込みかけた体を止めた。『同行』『伝言』という、妙に立派な文字が見えたからだ。

メグ「あのね、そんなに大変なことじゃなくて……」

マヤ「わかってるって。メグが困らないように、ちゃんと考えるから」

まっすぐな笑顔を向けられる。

うれしい。うれしいけれど、こうなるとは思っていなかった。

メグは小さくうなずき、自分のカップを見つめた。

お茶の表面に、赤くなり始めた顔がぼんやり映っていた。

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3.おはぎと、季節の名前

最初の問題は、ページの真ん中に一行だけ書かれていた。

『昨日、甘兎庵でみんなで食べた和菓子は?』

マヤ「おはぎ!」

チノ「早いですね」

マヤ「さっき話してたしな!」

問題の下には三つの四角いマスがあり、最後の一つだけ、花びらで囲まれている。

チノは一マスずつ『お』『は』『ぎ』と書き込んだ。

フユ「きなこではなかった」

マヤ「口についてた方を答えにするなよ」

メグ「でも、きなこも三文字だねー」

チノ「出題者が別の答えを増やさないでください」

メグが慌てて口を押さえる。

マヤは楽しそうに次のページをめくりかけたが、チノが花のマスへ鉛筆の先を向けた。

チノ「ここだけ、印がありますね」

マヤ「正解したら花丸ってこと?」

チノ「それなら全部を囲むと思います。次の問題も見てみましょう」

二問目には、こうあった。

『今日ここにいる四人の中で、名前が季節と同じ人は?』

マヤの目が、すぐにフユへ向く。

マヤ「いた!」

フユ「ずっといた」

マヤ「答えが隣に座ってるって、なんかいいな」

今度は二つのマス。二番目に花の印がついていた。

チノ「フユさんですね」

フユ「正解だ」

マヤ「本人が判定した!」

メグ「ふふ、フユちゃんにも手伝ってもらえちゃった」

チノは『ふ』『ゆ』と記入し、一問目へ戻った。それからメモ用紙の下の方に、二文字を並べる。

チノ「おそらく、この花で囲まれた文字だけを読むんです」

紙の上に『ぎ ゆ』が現れた。

マヤ「おおっ。急に暗号っぽくなった!」

チノ「最初から暗号です」

マヤがメグの顔をのぞき込む。

マヤ「合ってる?」

メグはこくりとうなずいた。

そのあと、もう一度うなずいた。うれしそうなのに、ノートを見る目は少し落ち着かない。

フユ「自分で作ったのか」

メグ「うん。昨日、帰ってから。問題、難しすぎないかなって思ったんだけど……」

マヤ「ちょうどいいぞ! 私たちなら解けるやつだ!」

メグの目尻が、ふわりと下がる。

フユは答えの書かれたページを眺めた。『ふゆ』の周りには、小さな雪の結晶が描かれている。

その一つだけ、線が多くなりすぎたのか、少し丸い。

フユ「これは、雪?」

メグ「うん。……ちょっと、お花みたいになっちゃった」

フユ「いいと思う」

そう言ってフユは、線がこすれないよう、ページの端を押さえた。

マヤが身を乗り出す。

マヤ「私の問題もある?」

メグ「あるよー」

マヤ「よし! 自分のことなら絶対わかる!」

チノとフユが、同時に椅子の上の本を見た。

マヤ「なんだよ、その目は!」

笑いながら、メグも同じ本を見る。

四人で机を囲んでいるだけで、いつも楽しい。今日も、ちゃんと楽しい。

だから、あと少しだけ欲しいなんて言ったら、欲張りだろうか。

考えかけて、メグは自分で首を振った。

昨日の夜に、何度も考えたことだった。書いて、消して、ノートを閉じて、また開いた。

ここまで来たのだから、今度は閉じない。

メグは膝の上の手をほどき、次のページがめくられるのを待った。

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4.牛乳説、急浮上

『ティッピーは、何の動物?』

問題を読んだマヤは、白い毛玉へ顔を向けた。

ティッピーは、ちょうどクッションの上で丸くなっていた。耳も足も、ふかふかの毛に埋もれている。

マヤ「……今、ちょっと難しくなってるな」

チノ「見た目で迷わないでください」

フユ「三文字だ」

マヤ「けだま」

チノ「動物の名前です」

ティッピーの耳がぴくりと動く。

メグが笑いをこらえきれず、肩を揺らした。

メグ「ごめんね、ティッピー。ちゃんと、うさぎさんだよねー」

チノ「あ」

メグの動きが止まった。

マヤが口を開ける。フユがノートを見る。メグもゆっくりとノートを見る。

メグ「……答え、言っちゃった」

マヤ「出題者から強力なヒントが来たぞ!」

チノ「ヒントというより、正解そのものです」

フユ「全員で相談していいルールだから」

メグ「私も入ってよかったんだねー」

チノ「それではクイズが成立しません」

言いながらも、チノの声に笑いが混じった。

メグは両手で口元を覆い、これ以上うっかり答えないようにする。その様子を見たマヤが、少しだけ声を落とした。

マヤ「大丈夫。次は言わなくても当てるから」

メグは指の向こうで笑って、うなずいた。

『うさぎ』の最初の文字が、メモに加わる。

ぎ、ゆ、う。

マヤは腕を組み、三文字を見下ろした。

チノも鉛筆を止める。フユが少し首を傾ける。

窓の外で、風に揺れた枝がこつんと壁を叩いた。

マヤ「……わかった」

マヤが顔を上げた。

マヤ「牛乳だ!」

チノ「牛乳、ですか」

マヤ「ぎゅうにゅう。ほら、最初が合ってる!」

マヤは自信たっぷりに、メグへ向き直った。

マヤ「牛乳が飲みたかったんだろ? 遠慮しなくていいのに!」

メグ「えっ。ぎゅ、牛乳……?」

チノ「それなら、お店にあります。温めましょうか」

椅子を引きかけたチノの袖に、フユの指先が触れた。

フユ「まだ、買い出しにも調理にも早い」

チノ「買い出しはしませんが……」

フユ「残りの問題がある」

フユがノートを持ち上げると、後ろに二枚の付箋がのぞいていた。

マヤ「その二問が『にゅう』になるんじゃない?」

フユ「一問で一文字なら、三文字は出ない」

マヤ「あ」

チノが静かに座り直す。

メモ用紙には、すでに『牛乳』と書かれていた。

チノはそれを一本の線で消したあと、しばらく見つめ、もう一本足した。

マヤ「……チノ、けっこう信じてた?」

チノ「温かいものが欲しくなる季節ですから」

フユはカップを持ち上げ、お茶を一口飲んだ。

フユ「紅茶も温かい」

チノ「そうですね」

チノの鉛筆が、紙の端を小さくつついた。

メグは困ったように笑いながら、自分のカップへ目を落とす。

メグ「でも……あったかいのがいいっていうのは、合ってるかも」

三人の視線が戻ってきた。

メグは自分の言葉に気づき、カップの陰へ口元を隠す。

マヤ「追加の手がかりだ!」

チノ「温かいもの、ですね」

フユ「飲み物とは限らない」

紙の上に、新しい一行が増える。

メグはそれ以上何も言えず、お茶を飲むふりをした。傾けたカップは、ほとんど空だった。

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5.なくしたしおりと、秘密の手紙

四問目を見た途端、マヤが椅子の上の本を抱き上げた。

『先週、マヤちゃんがみんなで探したものは?』

マヤ「これだ!」

黄色いリボンをつまみ、しおりを掲げる。

窓の光が透けた葉っぱは、さっきより少し明るい色をしていた。

メグ「正解だよー」

マヤ「ほらな。自分の問題はすぐわかる!」

フユ「今日は、なくす前に見つけた」

マヤ「なくしてないってば!」

マヤは言い返しながらも、しおりを本へ戻した。今度はリボンがはっきり見えるように、長めに出しておく。

チノが『しおり』を書き込む間、メグはそのリボンを見ていた。

メグ「見つかってよかったね」

マヤ「うん。せっかくメグと選んだ葉っぱだしな」

言ってから、マヤは少し口をとがらせる。

黄色いリボンの付いた押し葉のしおりを掲げるマヤと、隣で笑顔を見せるメグ

マヤ「……だから、あの日は焦ったんだよ」

メグは目を丸くした。

並木道で、どちらの葉がきれいか比べていたこと。マヤが二枚とも持って帰ると言ったこと。乾かした葉を挟むとき、リボンを結ぶ役を任せてもらったこと。

どれも覚えていたけれど、そんなふうに大事にしてくれていたとは知らなかった。

メグ「そっか……うん」

言葉の代わりに笑うと、マヤは照れたように本の背を撫でた。

マヤ「次! 最後の問題、いこう!」

四つ目の文字は『し』。

チノは書き写し、最後のページへ進んだ。

『この前、チノちゃんがみんなを誘うために、こっそり書いていたものは?』

鉛筆が止まる。

マヤの顔が、ゆっくりチノへ向いた。

マヤ「チノにも秘密があったのか」

チノ「秘密ではありません」

フユ「こっそり、と書いてある」

チノ「見せる前に読まれたくなかっただけです」

マヤ「なるほど。秘密だな」

チノは否定しかけ、やめた。

メグの視線が、心配そうにこちらへ向いている。

メグ「この問題、だめだったかな……?」

チノ「いえ。大丈夫です。……少し、驚いただけです」

チノは鉛筆を持ち直したが、答えを書く前に、マヤが鞄を探り始めた。

マヤ「誘うためって、もしかしてこれ?」

取り出したのは、小さなクリーム色の封筒だった。

フユも自分の鞄から、同じ封筒を出す。

メグはノートを抱えていた手を離し、鞄の内ポケットへ指を入れた。三通目の封筒が、テーブルに並ぶ。

チノ「……皆さん、持ってきたんですか」

マヤ「招待されたからな!」

フユ「日時を間違えないように」

メグ「私も。あと、うれしかったから」

封筒の端には、小さなカップの絵が描かれている。

中身は今日のお茶会への誘いだった。新しい紅茶があるので、よかったら一緒に。短い文章と、日時。それから、好きなお菓子を一つ教えてほしいという追伸。

先日、メグはチノがそれを書いているところに出くわした。チノはあわてて隠したものの、机から落ちた封筒まで隠すことはできなかった。

拾って渡すとき、自分の名前が書かれているのが見えた。

その夜、メグも机に向かったのだった。

マヤ「これ、チノの字ってすぐわかるよな。きちっとしてて」

フユ「カップもまっすぐだ」

メグ「でも、湯気がくるってなってて、かわいいんだよー」

チノ「絵の評価は、今しなくてもいいです」

チノは三通の封筒から目をそらした。

マヤが一枚を手に取り、何気なく裏返す。

マヤ「会ったときに言ってくれてもよかったのに。私、絶対来るし」

チノ「……そのときは、皆さんで別の話をしていたので」

鉛筆が、指の間で少し回った。

チノ「あと、書いた方が、ちゃんと誘えると思ったんです」

メグがそっと顔を上げた。

チノはまだ、封筒を見ている。

フユが自分の手紙を丁寧に畳み直した。

フユ「ちゃんと、伝わった」

マヤ「うん。お菓子の希望まで出したし!」

チノ「三種類書かれていたのには、驚きました」

マヤ「一つに決められなくて」

チノ「知っています」

テーブルには、三種類の焼き菓子が並んでいた。

マヤがそれに気づいて、笑った。チノは何も言わず、空いた皿を少し中央へ寄せる。

メグはノートの端を撫でた。

ちゃんと、伝わった。

フユの言葉を、心の中でもう一度なぞる。

チノ「答えは、手紙ですね」

『て』『が』『み』。

最後の花の中へ、最初の一文字が入った。

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6.五文字の答え

チノがメモ用紙に、最後の『て』を書き足した。

ぎ、ゆ、う、し、て。

五つの文字が、一列に並ぶ。

マヤ「ぎゆうして……?」

さっきまで勢いよく答えていた声が、最後の二文字で小さくなった。

チノは文字を見つめ、鉛筆を紙から離す。

フユは一度メグを見て、それからノートの最初のページへ戻った。

フユ「ここ」

指先が、花模様の下を示す。

マヤが先を急いで読み飛ばした、細い字の説明。

『小さい文字も、大きい文字のマスに書いてね。最後は声に出して読んでみてね』

フユ「『ゆ』を、小さくするんだと思う」

マヤの唇が、声を出さずに動いた。

チノの指が『ぎ』と『ゆ』の間で止まる。

フユがノートから手を離した。

三人は、今度はゆっくりと読んだ。

チノ・マヤ・フユ「ぎゅうして」

時計が一つ、音を刻んだ。

誰も、すぐには顔を上げなかった。

マヤはメモを見たまま瞬きをして、チノは鉛筆をそっと置いた。フユの手が、膝の上へ戻る。

椅子の向こうで、小さく紙の擦れる音がした。

ようやく三人が顔を上げる。

メグはノートを立てて、顔の半分を隠していた。

その上からのぞく頬は、さっきまでとは比べものにならないくらい赤い。耳まで染まっていて、目が合うと、ノートがさらに少し持ち上がる。

表紙の四つの花が、細かく揺れた。

ピンクのモコモコカーディガンを着たメグが、花のシール付きノートで口元を隠して頬を赤らめる

マヤ「……メグ」

呼ばれて、メグの肩がぴくりと動く。

こくん、と小さくうなずいた。

けれど、それだけでは足りない気がした。

マヤがふざけながら肩を寄せてくれること。チノがすぐ隣に座って、わからないところを教えてくれること。フユが帰り道で、歩く速さを合わせてくれること。

うれしい時間は、いつも少しずつあった。

今日は、自分からお願いしてみたかった。

ノートを、ほんの少し下げる。

メグ「もっと……みんなに」

声にした途端、指先まで熱くなった。

メグは笑おうとして、うまくいかず、もう一度ノートへ隠れかけた。

その前に、椅子が鳴った。

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7.答え合わせは、みんなで

マヤは立ち上がると、テーブルを回ってメグの隣へ来た。

呼びかける言葉を探すより早く、両腕が伸びる。

メグがノートを胸から離した、その隙間へ飛び込むように、マヤはぎゅっと抱きついた。

メグ「わっ……マヤちゃん」

マヤ「こういうことだろ!」

声は明るいのに、抱きしめる腕は少しだけ慎重だった。

メグの手が宙で迷ってから、マヤの背中へ回る。ふわふわの服越しに温かさが伝わった途端、肩に入っていた力が、すっと抜けた。

色とピンクのモコモコ服を着たマヤとメグが、頬を寄せて笑顔で抱きしめ合う

マヤはその感触を確かめるように一度抱き直し、テーブルの向こうへ顔を向ける。

マヤ「チノ、フユ! 『みんなに』だって!」

チノ「聞こえています。今、そちらに――」

マヤが片手を伸ばす。

チノは捕まる前に立ち上がり、カップから十分に離れたところまで来た。その手をマヤに引かれ、思ったより近くでメグと向かい合ってしまう。

チノ「そんなに引っ張らなくても、行きますから」

言い終わるころには、メグの肩へ腕を回していた。

指先だけで触れてから、ためらうように一度止まり、それでも最後には、ちゃんと背中を支える。

メグ「チノちゃん……」

チノ「……これで、合っていますか」

メグはうなずいた。

一回では伝えきれなくて、もう一度。

少し離れた場所で、フユが猫のぬいぐるみを椅子に座らせた。

それから、三人の輪へ近づく。

どこへ手を置けばよいか、ほんの一瞬迷っていると、メグの方から片腕が伸びてきた。

メグ「フユちゃんも」

フユはその手を見て、顔を上げた。

フユ「……うん」

空いていた場所へ、そっと体を寄せる。

メグの背中に触れた手が、遠慮がちに服をつまんで、それからゆっくり開いた。

四人で抱き合うと、腕の行き場が少し難しい。

水色とクリーム色、ピンクとラベンダー色の袖が寄り合い、柔らかな毛並みが頬をかすめた。

マヤの肘がチノに当たり、チノが小さく抗議し、フユが半歩ずれる。そのたびに、メグの髪が誰かの頬をくすぐった。

誰かが笑うと、くっついている肩にも、その振動が伝わってきた。

マヤがメグの顔をのぞき込む。

さっきまでノートに隠れていた口元は、もう、隠せないくらい緩んでいた。

マヤ「なんだよもー、可愛すぎるだろ!」

メグ「そ、そんなに言わないでー……」

メグは顔を伏せる。でも、今度は隠れるためのノートがない。

代わりにマヤの肩へ額を寄せると、マヤまで少し黙ってしまった。

チノが視線を横へ逃がす。フユはメグの背中から手を離さないまま、小さくうなずいた。

フユ「これは、ずるいと思う」

チノ「……同感です」

メグ「クイズ、ちゃんと作ったのに……」

マヤ「そっちじゃないって!」

笑い声が、さっきよりずっと近くで重なった。

メグは胸元に挟まっていたノートを片手で閉じ、そばのテーブルへ置く。

空いた手で、もう一度みんなを抱きしめた。

メグを中心にマヤ・チノ・フユが寄り添い、色違いのモコモコ服で温かく抱きしめ合う四人

今度は、自分から。

メグ「……正解だよー」

その声はもう、紙の後ろからではなかった。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。メグが勇気を出して伝えたお願いと、四人で過ごす温かなひとときを楽しんでいただけたら嬉しいです。

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※本記事は『ご注文はうさぎですか?』を題材とした非公式の二次創作SS・ファンアートです。原作・公式とは関係ありません。原作およびキャラクター等の権利は各権利者に帰属します。

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